「東京消防庁のⅠ類とⅢ類って何が違うの?」

「高卒でⅢ類から入ったら、将来不利になる?」

「昔あった能力認定試験って今もあるの?」

東京消防庁を目指している人の中には、このような疑問を持っている方もいると思います。

特にインターネットには、

「Ⅰ類=大卒」

「Ⅲ類=高卒」

「Ⅲ類で入ったら出世できない」

「入庁後に能力認定試験を受ければⅠ類になれる」

といった古い情報も残っています。

しかし、東京消防庁の採用制度は変わっています。

2026年度の消防官採用試験では、主に、

  • 消防官専門系
  • 消防官Ⅰ類(教養試験方式)
  • 消防官Ⅰ類(適性検査方式)
  • 消防官Ⅲ類

などの区分があります。現在の採用案内には消防官Ⅱ類はありません。(東京消防庁採用情報サイト)

この記事では、元東京消防庁消防士の経験も踏まえながら、

  • Ⅰ類とⅢ類の違い
  • 高卒でもⅠ類を受験できるのか
  • 採用区分で仕事内容は変わるのか
  • 初任給の違い
  • 昇任への影響
  • 旧「能力認定試験」は現在どうなっているのか
  • Ⅲ類採用後にⅠ類へ変わることはできるのか

まで、2026年の制度に合わせて解説します。


結論|Ⅰ類とⅢ類は「消防士の種類」ではない

最初に一番重要なことを説明します。

Ⅰ類とⅢ類は、

消防士として担当する仕事の種類を表しているわけではありません。

どちらも採用されれば消防官として東京消防庁で勤務します。

違うのは主に、

  • 受験資格
  • 試験レベル
  • 採用時の給与
  • 採用区分

です。

「Ⅰ類だから火災現場へ行く」

「Ⅲ類だから救急だけ担当する」

といった違いではありません。

採用後は消防学校で教育を受け、その後それぞれの所属で消防官として勤務します。


2026年の東京消防庁にはどんな採用区分がある?

2026年度の東京消防庁消防官採用試験には、

消防官専門系

消防官Ⅰ類(教養試験方式)

消防官Ⅰ類(適性検査方式)

消防官Ⅲ類

があります。(東京消防庁採用情報サイト)

以前の東京消防庁にはⅡ類という区分もありました。

そのため、古いブログや掲示板などを見ると、

Ⅰ類・Ⅱ類・Ⅲ類

という説明が出てきます。

しかし、2026年度の消防官募集ではⅡ類採用試験は実施されていません。

これから東京消防庁を受験する人は、必ず現在の採用案内を基準に考えてください。


消防官Ⅰ類とは?

Ⅰ類は、大学卒業程度の教養試験などを行う採用区分です。

2026年度のⅠ類・教養試験方式では、

  • 教養試験40題
  • 試験時間2時間
  • 論文600字以上800字程度
  • 適性検査
  • 資格・経歴評定

などが第1次試験で実施されます。(東京消防庁採用情報サイト)

第2次試験では、

  • 身体・体力検査
  • 個人面接

などがあります。

また、Ⅰ類には現在、SPI3-Uを利用する適性検査方式もあります。(東京消防庁採用情報サイト)


消防官Ⅲ類とは?

Ⅲ類は、高校卒業程度の教養試験を実施する採用区分です。

2026年度は、

2005年4月2日から2009年4月1日までに生まれた人

が対象です。(東京消防庁採用情報サイト)

第1次試験では、

  • 高校卒業程度の教養試験40題
  • 作文600字以上800字程度
  • 適性検査
  • 資格・経歴評定

などがあります。

第2次試験ではⅠ類と同様に、

  • 身体・体力検査
  • 個人面接

などが実施されます。(東京消防庁採用情報サイト)


「Ⅰ類=大卒、Ⅲ類=高卒」は完全には正しくない

ここは誤解しやすいポイントです。

確かに、

Ⅰ類=大学卒業程度

Ⅲ類=高校卒業程度

の試験です。

しかし、これは必ずしも、

大学を卒業していなければⅠ類を受験できない

という意味ではありません。

2026年度Ⅰ類では、1991年4月2日から2005年4月1日までに生まれた人については、受験資格として大学卒業そのものを必須としていません。(東京消防庁採用情報サイト)

つまり、年齢等の条件を満たしていれば、

高卒でもⅠ類を受験できるケースがあります。

ここは非常に重要です。

「高卒だから一生Ⅲ類」

という考え方は正確ではありません。


Ⅰ類とⅢ類で仕事内容は変わる?

採用区分によって、

消防官としての基本的な仕事内容が完全に分かれるわけではありません。

採用されれば、消防士として、

  • 消防
  • 救急
  • 救助
  • 予防
  • 指令
  • その他消防行政

など、さまざまな業務へ進む可能性があります。

もちろん所属や資格、適性、経験などによって担当業務は変わります。

しかし、

Ⅰ類だからエリート部門
Ⅲ類だから現場だけ

という単純な区分ではありません。


Ⅰ類とⅢ類では初任給が違う

採用直後の給与には違いがあります。

東京消防庁が2026年1月1日現在として案内している初任給は、

採用区分初任給
専門系約326,100円
Ⅰ類約321,900円
Ⅲ類約279,400円

です。(東京消防庁採用情報サイト)

Ⅰ類とⅢ類では、採用時点で約4万円の差があります。

ただし実際の給与は、

  • 学歴
  • 職歴
  • 扶養手当
  • 住居手当
  • 通勤手当
  • 各種手当

などによって変わる場合があります。


Ⅲ類で入ったら昇任できない?

これはよくある誤解です。

東京消防庁では、昇任について、

公正な競争試験、選考等によって決定

すると案内しています。(東京消防庁採用情報サイト)

したがって、

「Ⅲ類採用だから上位階級へ行けない」

と単純に考える必要はありません。

採用区分と消防官の階級は別の制度です。

消防官には、

  • 消防士
  • 消防士長
  • 消防司令補
  • 消防司令
  • 消防司令長

などの階級があり、勤務実績や昇任選考等によってキャリアを進めていきます。


ただし採用区分によって必要な経験年数に差がある

一方で、

採用区分がまったく関係ない

という意味でもありません。

東京都の公安職給料表に関する資格基準では、Ⅰ類・Ⅱ類・Ⅲ類によって一定の職務の級へ進む際に必要な経験年数が異なる規定があります。(東京都・霊気情報)

つまり、採用区分は、

  • 初任給
  • 給与上の経験年数
  • キャリアの初期段階

などに関係します。

ただし、

「Ⅲ類はここまでしか昇任できない」

という単純な階級上限とは別の話です。


旧「能力認定試験」とは?

この記事を以前から読んでいる人にとって、一番気になるのがここだと思います。

以前の東京消防庁では、

能力認定

という制度がありました。

簡単に説明すると、下位の採用区分で採用された職員が一定の試験等に合格することで、上位の採用区分として扱われる仕組みがありました。

そのため昔は、

Ⅲ類から入庁して能力認定でⅠ類を目指す

といった話がありました。


2026年現在「能力認定試験」はどうなった?

ここは古いブログ情報に注意してください。

東京都の給与規則の運用には、

2016年4月1日より前に実施された能力認定に合格した場合

について、採用試験または採用選考に合格したものとみなす経過規定が残っています。(東京都・霊気情報)

一方、2026年度の東京消防庁公式採用サイトでは、

「能力認定試験」という現在の採用試験制度は案内されていません。

現在公開されている制度は、

  • 専門系
  • Ⅰ類
  • Ⅲ類
  • 再採用

などです。(東京消防庁採用情報サイト)

したがって、

「Ⅲ類で入れば、あとから現在も能力認定試験を受ければいい」

という古い説明をそのまま信じるのはおすすめしません。


では現在、Ⅲ類からⅠ類へ変わることはできる?

現在の東京消防庁の公開資料を見ると、

Ⅲ類で採用された後にⅠ類採用試験へ合格したケース

が制度上存在することが確認できます。

東京消防庁の再採用案内では、

Ⅲ類で採用され、その後Ⅰ類の採用試験に合格して退職した人

について、

Ⅰ類として再採用

する例が公式に示されています。(東京消防庁採用情報サイト)

つまり現在は、昔の「能力認定」という説明より、

Ⅰ類の受験資格を満たし、Ⅰ類採用試験に合格する

という考え方で理解する方が現在の公開制度に合っています。

具体的な在職職員の手続き・適用時期等は人事制度に関わるため、最新情報は東京消防庁人事部人事課へ確認してください。


高卒なら最初からⅠ類を受験した方がいい?

これは年齢と現在の学力によります。

例えば、受験資格を満たしていて、

  • 大学卒業程度の教養試験へ対応できる
  • SPI方式が得意
  • Ⅰ類の年齢条件を満たしている

のであれば、最初からⅠ類を検討する価値があります。

理由の一つは、初任給が高いことです。

また、後から採用区分を変更することを前提にするより、

最初から希望する区分で合格できれば制度上もシンプルです。

一方、高校卒業時点ですぐ消防士になりたい場合はⅢ類が現実的な受験区分になります。


Ⅰ類とⅢ類、どちらを受けるべき?

大まかには次の考え方でいいでしょう。

Ⅰ類がおすすめの人

  • Ⅰ類の受験資格を満たしている
  • 大卒程度の試験に対応できる
  • SPI方式が得意
  • 採用時の給与も重視したい

Ⅲ類がおすすめの人

  • 高校卒業前後で消防士を目指している
  • Ⅲ類の年齢条件に該当する
  • 高校卒業程度の試験から挑戦したい
  • できるだけ早く消防士として働きたい

「Ⅰ類の方が偉いからⅠ類」

という選び方ではなく、

自分が受験できる区分と試験レベルから判断する

ことが重要です。


元東京消防庁消防士として伝えたいこと

採用試験を受ける段階では、

「Ⅰ類じゃないと将来不利なのでは?」

と心配になるかもしれません。

しかし、消防に入ってから重要になるのは、採用区分だけではありません。

実際の職場では、

  • 仕事を覚える
  • 訓練する
  • 災害現場で経験を積む
  • 資格を取る
  • 後輩を指導する
  • 昇任試験へ挑戦する

など、入庁後に積み上げていくものがたくさんあります。

採用区分はキャリアのスタート地点の一つです。

それだけで消防人生のすべてが決まるわけではありません。


よくある質問

高卒でも東京消防庁Ⅰ類を受験できますか?

年齢等の受験資格を満たしていれば、高卒でもⅠ類を受験できるケースがあります。

2026年度Ⅰ類では、1991年4月2日から2005年4月1日生まれについて大学卒業そのものは受験要件になっていません。(東京消防庁採用情報サイト)


Ⅲ類で入ると一生Ⅲ類ですか?

採用区分と階級は別です。

また現在の東京消防庁公式資料には、Ⅲ類採用後にⅠ類採用試験へ合格した例も示されています。(東京消防庁採用情報サイト)


能力認定試験は現在もありますか?

2026年度の公開採用制度には「能力認定試験」は掲載されていません。

東京都の規則には2016年4月1日前に実施された能力認定についての経過規定が残っています。(東京都・霊気情報)

そのため、昔の記事にある能力認定制度と現在の制度を混同しないよう注意してください。


Ⅰ類とⅢ類で消防学校は別ですか?

採用区分によって採用条件等は違いますが、採用された消防官は消防学校で初任教育を受け、消防官として必要な知識・技術を学びます。


Ⅰ類の方が必ず早く昇任できますか?

一律には言えません。

昇任は競争試験・選考等によって決定され、勤務実績なども関係します。(東京消防庁採用情報サイト)


まとめ|2026年は「能力認定」ではなく現在のⅠ類・Ⅲ類制度を確認しよう

今回のポイントをまとめます。

2026年度の東京消防庁消防官採用試験では、主に、

  • 専門系
  • Ⅰ類
  • Ⅲ類

などの採用区分があります。(東京消防庁採用情報サイト)

Ⅰ類とⅢ類の主な違いは、

受験資格・試験レベル・初任給・採用区分

です。

2026年1月現在の初任給は、

Ⅰ類:約321,900円

Ⅲ類:約279,400円

となっています。(東京消防庁採用情報サイト)

ただし、

Ⅰ類=大卒の人しか受けられない

Ⅲ類=高卒だから出世できない

という理解は正確ではありません。

年齢等の条件を満たせば、高卒でもⅠ類を受験できる場合があります。

また、旧記事で説明していた「能力認定」については、2016年以前の制度に関する経過規定が残っている一方、2026年度の公開採用制度には能力認定試験として掲載されていません。(東京都・霊気情報)

これから東京消防庁を目指す方は、

古い能力認定試験の情報ではなく、現在のⅠ類・Ⅲ類採用制度を基準に考えること

が大切です。

採用区分は消防人生のスタート地点です。

その後のキャリアは、

入庁後にどのように経験を積み、学び、昇任へ挑戦していくか

によって変わっていきます。