消防士(Fire Fighter)

消防士のリアルな現場 第一話

 

 

みなさんは消防士をどんなイメージで見ているでしょうか。

 

災害から街を守る、街のヒーローですか?

筋肉マッチョで、誠実で優しいですか?

子どもと一緒に遊んで、面倒見のいいお父さんですか??

それとも、、、、チャラいですか???

 

どれも正解です。笑

元消防士の自分が言うので、間違いありません。

ただ、これだけは言わせて下さい。

みんな真っ直ぐなんです。

仕事に対しても、女性に対しても、子育てに対しても。。

そうでなければ、街の災害に備えて、毎日市民の命のために、体力錬成や訓練をしている人がどこにいますか?消防士の使命は、第一に人命救助です。

これだけは、消防士であれば、必ず備えている使命感です。

 

そして、そんな自分が経験した現場をいくつか紹介します。

 

ちょっと、小説形式でストーリーを進めていきます。。。笑

 

第一話  現場に笑顔はない

 

2011年3月11日 東日本大震災が発生。これに伴い、津波や福島第一原子力発電所の災害により、甚大なる被害を受けていた。

その頃、自分はと言うと、4月に東京消防庁の入庁を控えていた。

実家の徳島で、午前中のトレーニングが終わって、リビングで疲れた身体を気遣って、少し大の字でリラックスしながら、寝落ちしそうな記憶が曖昧な感じで、テレビを見ていた時だった。

テレビで、緊急地震速報が流れる。夢の現実の狭間でいた自分は、反射的に飛び起きた!!どうなるんだろう?いやっ、どうなってんだ??とか考えながらも、何もできないまま、遂に4月の入庁の日を迎えていた。その頃、東京も被害は受けており、放射能が酷いから、入庁は見送りだとか。早速、災害現場に行くんじゃないか?と、本当かデマかも解らない情報が、良く耳に入ってきた。

結局は、入庁後、通常通りに、実技の研修と座学の研修を受けることとなる。ただ、その頃まだ余震は続いていた。時折、揺れることはある中で、嵐のように研修がスタートする。

初めに、これから研修に携わってくれる教官と助教が紹介される。

研修1週間ぐらいで、3人ぐらいは研修からリタイヤして行った。

助教の言葉が印象的だった。

「ここわな!!お前らを立派な消防士に育てるんじゃないんだ!!

消防士に適性のない奴を落とす研修なんだよ!!」

来たー。やっぱそう来ないと。盛り上がらないなーと思いながら、一人ハイテンションでモチベーションは一人グングンと上昇気流に乗って行った。

それから、自分は目標であるハイパーレスキュー隊に入隊する為に、まずは同期の中で一番になる為に、毎日欠かさず筋力トレーニングし、人の何倍も技術の自主訓練をし、クラスでは技術試験1番、体力試験2番の成績を収めることができた。

 

そんなある日の、訓練中のことでした。

同期の仲間と、会話をしていて、少し笑った瞬間でした。

教官「お前ら何笑ってんだ!!!」

怒声が飛んできた。

自分「はい!!申し訳ありません。」

教官「いいよ。訓練しなくていいから、端で見てろ。やらなくていいよ。」

と叱責を受けた。

自分「やりたいです。やらせて下さい。」

こんなやりとりが、数回繰り返された。自分はこの時少し調子に乗っていたのかもしれない。それまで、気を引き締めていた訓練も終盤に差し掛かっている頃でもあった。正直、笑顔は自分の取り柄でもあったから、自然と笑ってしまう癖があった。

 

そして、教官は静かに口を開きます。

「現場に笑顔はないんだよ。災害現場に行ってみろ、もし建物の中に要救助者がいて、要救助者の家族が近くにいたら、お前らは笑えるか?報道陣もいっぱい来て、カメラも現場に向けられてるんだぞ。どうなると思う?」

静かに、現場の厳しさを、悟らされるように、、、言われた。

 

沈黙があり、再度教官は口を開く。

 

「災害の現場はいつも真剣勝負なんだよ。ふざけてるなら、訓練はやらなくていい。普段の訓練が、現場に出るんだよ。」

 

この時、教官は自分の少し浮ついている様子が解っていたかのように、叱ってくれた。

自分でも解っていた。それから、訓練には真剣に取り組んでいた。

しかし、ある日の渡過訓練での落下をきっかけに、少し左肩に違和感を憶えていた。

 

人生を変える運命が近づいている事を、その時は予想だにしていなかった。

 

 

そして、、、数日後に人生を変える大きな事件は起こる。

いつも通り、訓練に入り、降下訓練という、ロープを使用して、高所から地上まで降りる訓練をしている最中でだった。

ロープの取り扱いを誤り、高所から数メートル落下!!

左肩に違和感を持ったまま、訓練をしていた事やロープのちょっとした取り扱いを間違えた為に、左肩を脱臼し、高所で宙ぶらりの状態になった。

 

この時、自分の頭は真っ白になっていた。

肩の痛さより、これからどうなるんだろう。

少しレスキュー隊、ハイパーレスキュー隊が遠ざかって行くような感覚だった。

自分はこの日から、トレードマークの笑顔を封印し、笑わなくなった。。。

消防士を辞めるまで!!

 

次回

第2話 白銀世界での救助活動