「消防士になりたいけど、高校を卒業してすぐ受験するべき?」

「大学へ行ってから消防士になった方が給料や昇進で有利?」

「高卒だと将来不利になる?」

消防士を目指している高校生なら、一度は悩むと思います。

私は大学卒業後、東京消防庁消防官Ⅰ類に合格し、消防学校を卒業した後に消防署で勤務しました。

実際に消防の世界へ入ると、

高卒で入庁した人。

大学を卒業して入庁した人。

社会人を経験してから入庁した人。

さまざまな経歴の消防士がいました。

先に私の結論を言うと、

消防士になること自体は、高卒でも大卒でも可能です。どちらが絶対に有利とは言えません。

ただし、

採用試験の区分

初任給

消防士になる年齢

大学4年間で得られる経験

には大きな違いがあります。

この記事では、2026年度の東京消防庁を例に、高卒と大卒の違いを詳しく比較します。

結論|消防士一本なら高卒も強い。進路の選択肢を残すなら大卒

先に結論をまとめると、私はこう考えています。

比較高卒大卒
消防士になる年齢◎ 早い△ 約4年遅い
初任給
試験レベルⅢ類は高校卒業程度Ⅰ類は大学卒業程度
大学費用◎ 不要△ 必要
4年間の収入◎ 先に働ける△ 学生期間
進路変更のしやすさ
大学での経験
消防士としての実務経験◎ 早く積める

です。

消防士になる意思が非常に強く、

「高校卒業後すぐ消防の世界へ入りたい」

という人なら、高卒で受験するのは十分ありです。

一方、

「消防士以外にも興味がある」

「大学生活も経験したい」

「将来転職する可能性も考えておきたい」

のであれば、大学へ進学するメリットも大きいです。

まず知っておきたい|Ⅰ類=大卒限定、Ⅲ類=高卒限定ではない

ここは非常に重要です。

東京消防庁には、

消防官Ⅰ類

消防官Ⅲ類

などの採用区分があります。

一般的には、

Ⅰ類=大学卒業程度

Ⅲ類=高校卒業程度

と説明されます。

しかし、

「大学卒業程度」と「大学卒業必須」は同じ意味ではありません。

2026年度の消防官Ⅰ類では、1991年4月2日から2005年4月1日までに生まれた人は、大学を卒業していなくても受験資格を満たします。

東京消防庁の公式FAQでも、

「大学を卒業していなくても、年齢が受験資格を満たしていればⅠ類を受験できる」

と明記されています。

「大卒程度」は試験問題のレベル

Ⅰ類の教養試験は、

大学卒業程度

の問題です。

一方、Ⅲ類は、

高校卒業程度

です。

したがって、

高卒だから一生Ⅲ類しか受験できない。

ということではありません。

年齢などの要件を満たせば、高卒者でもⅠ類を受験できます。

これはかなり勘違いされやすいポイントです。

2026年度|東京消防庁Ⅰ類とⅢ類の違い

現在の制度を比較してみます。

項目消防官Ⅰ類消防官Ⅲ類
試験レベル大学卒業程度高校卒業程度
年齢上限翌年度4月1日時点35歳同21歳
教養試験ありあり
SPI方式ありなし
論作文論文作文
体力検査ありあり
個人面接ありあり
初任給約321,900円約279,400円

2026年度はⅠ類に教養試験方式とSPI3-Uを使う適性検査方式があります。一方、Ⅲ類は高校卒業程度の教養試験と作文試験です。

消防士になるまでの採用試験全体をまだ把握していない人はこちらも先に確認してください。

関連記事:
消防士になるには?採用試験から消防学校まで元消防士が解説

高卒と大卒では初任給が違う

かなり気になるのがお金です。

2026年1月1日時点の東京消防庁消防官の初任給は、

Ⅰ類:約321,900円

Ⅲ類:約279,400円

です。

単純なスタート時点では、Ⅰ類の方が高いです。

ただし、ここだけを見て、

「大卒の方が絶対得」

とは言い切れません。

なぜなら高卒で消防士になれば、大学へ通う4年間を消防士として働く期間にできるからです。

高卒は4年間早く給与をもらえる

例えば18歳で高校を卒業して消防士になれば、

22歳になる頃には、

すでに約4年間の消防経験

があります。

一方、大学へ進学した人は22歳前後から消防士生活をスタートします。

高卒の場合、

4年間早く給与をもらう。

4年間早く現場経験を積む。

4年間早く消防の知識・技術を身につける。

という大きなメリットがあります。

さらに大学へ進学する場合には、学費や生活費も必要になります。

つまり、

月給だけで高卒・大卒の損得を判断するのは早い

ということです。

大卒には初任給以外のメリットもある

一方、大卒には大学へ行くからこそのメリットがあります。

進路の選択肢を広く持てる

高校3年生の時点で、

「消防士しか考えていない」

と思っていても、大学4年間で考え方が変わることがあります。

民間企業。

別の公務員。

教員。

専門職。

大学院。

など、選択肢が広がります。

消防士になった後に転職を考える場合でも、求人によっては大卒を応募条件としているケースがあります。

ですから、

長い人生全体で見た選択肢

という点では大卒にメリットがあります。

大学で面接材料を作れる

大学では、

部活動。

サークル。

アルバイト。

ゼミ。

ボランティア。

留学。

資格取得。

など、さまざまな経験ができます。

これらは消防士採用試験の面接でも使えます。

私自身も東京消防庁の面接では、大学で学んだ内容や学生時代の経験について質問されました。

実際に私が聞かれた面接質問はこちらで公開しています。

関連記事:
東京消防庁の面接で実際に聞かれた質問9選

高卒のメリット

早く消防士になれる

最大のメリットです。

18歳前後で入庁できれば、大卒者が消防学校へ入る頃には数年間の実務経験があります。

消防という仕事が本当にやりたいのであれば、この差は大きいです。

大学の学費がかからない

大学4年間の学費や一人暮らしの生活費を負担する必要がありません。

家庭の経済状況によっては非常に大きなポイントです。

若いうちから現場経験を積める

消防では、

火災。

救急。

救助。

予防。

防災。

など、現場で学ぶことが大量にあります。

学歴以上に、

消防に入ってから何を学び、何ができるようになるか

が重要な仕事です。

高卒のデメリット

最初の給与はⅠ類より低い

先ほど説明したとおり、2026年現在ではⅠ類とⅢ類で初任給に差があります。

高卒直後はⅠ類を受けられない

18歳の高校卒業時点であれば、通常はⅢ類が主な選択肢です。

Ⅰ類には年齢・学歴等の受験要件があります。

将来の進路変更では大卒資格が必要な場合がある

消防士を一生続けるなら問題にならない可能性もあります。

しかし、

「10年後に違う業界へ行きたい」

となった場合、求人によっては大卒要件があります。

この点は、高校生の時点で少し考えておいてもいいでしょう。

大卒のメリット

Ⅰ類の初任給が高い

2026年現在、Ⅰ類の初任給は約321,900円です。

SPI方式も選択できる

2026年度のⅠ類には、

教養試験方式

だけでなく、

SPI3-Uによる適性検査方式

もあります。

民間企業と併願する大学生にとっては、かなり使いやすい制度です。

大学4年間で自分の将来を考えられる

18歳で人生を完全に決める必要はありません。

大学で勉強したり、多くの人と出会ったりする中で、

「やっぱり消防士になりたい」

と思えば、そのとき受験できます。

逆に、

「別の道へ行きたい」

と思えば変更できます。

この選択肢を残せることは大学進学の大きなメリットです。

大卒のデメリット

消防士になるのが4年程度遅くなる

高校卒業後すぐ入庁した人と比較すると、消防経験のスタートは遅くなります。

大学の学費が必要

消防士になるために大学卒業資格が必須というわけではありません。

ですから、

「消防士になるためだけに大学へ進学する」

のであれば、その4年間に何を得たいのかまで考えた方がいいです。

高卒と大卒で仕事内容は変わる?

ここもよく聞かれます。

採用区分が違っても、

消防士として採用された後は、

火災。

救急。

救助。

予防。

など消防業務に従事します。

「高卒だから消火しかできない」

「大卒だから救助隊に入れる」

という仕組みではありません。

消防士に本当に必要な能力についてはこちらでも詳しく解説しています。

関連記事:
消防士に必要な能力5つ|元東京消防庁消防士が解説

高卒と大卒で昇進に差はある?

ここは、

「大卒なら自動的に出世する」

と思わない方がいいです。

東京消防庁は現在、昇任について、

公正な競争試験、選考等によって決定する

と説明しています。

消防士として採用された後には、

消防士長。

消防司令補。

消防司令。

消防司令長。

消防監。

などの階級があります。

つまり、

大学を卒業しているだけで階級が自動的に上がるわけではありません。

実際には、

勤務実績。

昇任試験。

選考。

本人の能力。

などが関係します。

したがって、

「出世したいからとにかく大学へ行けばいい」

という単純な話ではありません。

高卒と大卒、どちらが消防試験に受かりやすい?

これも、

「高卒の方が簡単」

とは言い切れません。

確かにⅢ類の教養試験は高校卒業程度、Ⅰ類は大学卒業程度なので、問題そのものの難易度はⅠ類の方が高いです。

しかし、合格しやすさは、

応募者数。

採用人数。

受験者層。

その年の試験。

によって変わります。

例えば2025年度の東京消防庁の最終倍率は、

採用区分倍率
Ⅰ類1回目・SPI方式3.9倍
Ⅰ類1回目・教養方式4.1倍
Ⅰ類2回目9.4倍
Ⅲ類1回目4.9倍
Ⅲ類2回目9.3倍

でした。

これを見ると、

試験問題が易しいⅢ類だから倍率も低い

とは限らないことが分かります。

受験区分ごとに対策することの方が重要です。

Ⅰ類は論文、Ⅲ類は作文対策も忘れない

東京消防庁Ⅰ類の教養試験方式では論文試験、Ⅲ類では作文試験があります。どちらも600字以上800字程度です。

筆記ばかり勉強して、

「論文・作文を一度も書いていない」

という状態は避けてください。

私が消防・警察試験で実践していた論文構成や、実際の添削例はこちらにまとめています。

【2026年最新版】消防士の論文・作文試験完全攻略|元東京消防庁消防官が構成・書き方・頻出テーマを解説

高卒がおすすめな人

私は次のような人なら、高卒から消防士を目指すのは十分おすすめできます。

消防士になる意思がかなり固い

他の仕事はほとんど考えておらず、

「とにかく早く消防の現場へ行きたい」

という人です。

大学へ行く目的が特にない

消防士になるためだけに、

「周囲が進学するから自分も大学へ」

というのであれば、一度考えてみてもいいでしょう。

早く経済的に自立したい

18歳前後から公務員として働けるのは高卒採用の大きなメリットです。

大卒がおすすめな人

消防士以外の進路も迷っている

これは大きいです。

消防士だけでなく、

警察。

一般行政。

民間企業。

教員。

その他専門職。

などに興味があるなら、大学へ行きながら進路を考える方法もあります。

大学で経験したいことがある

スポーツ。

研究。

留学。

資格。

ボランティア。

など、明確にやりたいことがあるなら大学へ行く価値があります。

将来の転職まで考えて選択肢を残したい

今は消防士一本でも、10年後の自分が同じ気持ちとは限りません。

消防士から別の仕事へ行く可能性まで考えるなら、大卒資格が役立つ場合があります。

私なら高校生にどうアドバイスする?

私は、

「消防士になりたいなら絶対大学へ行け」

とも、

「大学なんて行かず高卒で消防へ行け」

とも言いません。

一番聞きたいのは、

「なぜ大学へ行きたいのか?」

です。

消防士になるためだけなら、大学は必須ではありません。

一方、

大学でやりたいことがある。

別の進路も考えたい。

4年間でいろいろ経験したい。

なら、大学へ進学する意味があります。

逆に、

消防士になりたい気持ちが明確で、

高校卒業後すぐ採用試験へ挑戦したい。

というなら、

高卒から消防士になるのも立派な選択です。

結局、

高卒か大卒かより、

その数年間を何のために使うのか

の方が重要だと思います。

高卒で一度落ちたら大学へ行くのもあり

進路を、

「高卒採用に落ちたら人生終了」

のように考える必要もありません。

例えば、

高校3年でⅢ類を受験。

不合格。

大学へ進学しながら再挑戦。

という方法もあります。

反対に、高卒後に別の仕事を経験し、年齢要件を満たした段階でⅠ類を受験する方法もあります。

消防士採用は、新卒だけを対象とした試験ではありません。

既卒・社会人からの挑戦についてはこちらの記事も参考になります。

関連記事:
消防士は新卒と既卒・社会人どっちが受かりやすい?

高卒でも大卒でも最後は面接対策が必要

Ⅰ類・Ⅲ類のどちらを受験しても、第2次試験では個人面接があります。

「なぜ消防士なのか?」

「なぜ東京消防庁なのか?」

「高校・大学で何をしてきたのか?」

ここを自分の言葉で答えられるようにしておきましょう。

私が東京消防庁の本番で実際に聞かれた質問はこちらでも公開しています。

関連記事:
東京消防庁の面接で実際に聞かれた質問9選

さらに志望動機・自己PR・深掘りまでまとめて対策したい人はこちらです。

【完全攻略】これで面接試験は差をつけろ〜消防・警察合格への道〜

消防士の高卒・大卒についてよくある質問

高卒でも東京消防庁の消防士になれますか?

なれます。

2026年度も消防官Ⅲ類採用試験が実施されており、教養試験は高校卒業程度です。

高卒でもⅠ類を受験できますか?

年齢等の受験資格を満たしていれば可能です。

東京消防庁も、大学を卒業していなくても年齢が受験資格を満たしていればⅠ類を受験できると公式FAQで回答しています。

大卒の方が消防士として出世しますか?

大卒だから自動的に昇任するわけではありません。

東京消防庁では、昇任は公正な競争試験・選考等によって決定するとしています。

高卒と大卒で給料は違いますか?

採用区分による初任給の違いがあります。

2026年1月1日時点では、消防官Ⅰ類が約321,900円、Ⅲ類が約279,400円です。学歴・職歴等によって一定の加算が行われる場合もあります。

Ⅲ類の方が合格しやすいですか?

必ずしもそうではありません。

試験問題はⅢ類の方が高校卒業程度ですが、実際の倍率は年度・回によって変わります。2025年度の1回目ではⅠ類教養方式4.1倍、Ⅲ類4.9倍でした。

消防士になるために大学へ行く必要はありますか?

必須ではありません。

高卒から消防士になる道もあります。重要なのは、自分の年齢・学歴などで受験できる採用区分を確認することです。

まとめ|高卒と大卒どちらでも消防士になれる。重要なのは「何を優先するか」

消防士になるうえで、

高卒だから不利。

大卒だから有利。

と単純には言えません。

高卒には、

早く消防士になれる。

早く給与を得られる。

実務経験を早く積める。

大学費用が必要ない。

というメリットがあります。

一方、大卒には、

Ⅰ類の初任給が高い。

大学でさまざまな経験ができる。

進路の選択肢を広く持てる。

SPI方式などを選択できる。

というメリットがあります。

そして覚えておいてほしいのが、

東京消防庁Ⅰ類は「大学を卒業した人しか受けられない試験」ではない

ということです。

Ⅰ類の「大学卒業程度」は、主に試験レベルを表しています。

だから、

「高卒だから将来は絶対不利」

と決めつける必要もありません。

逆に、

「消防士になるなら大学へ行く意味はない」

ということでもありません。

高校卒業後の4年間を、

消防士として経験を積むために使うのか。

それとも、

大学で学び、経験し、将来の選択肢を増やすために使うのか。

ここを自分で考えてください。

どちらを選んでも、最終的に必要なのは、

採用試験に合格し、消防士になってから努力し続けること

です。