消防士の採用試験を受けるとき、「体力試験はどのくらいできれば合格できる?」「腕立て伏せや握力は何回・何kg必要?」と気になる方も多いと思います。

私自身、東京消防庁の採用試験を受験して消防士として勤務した経験があります。また、消防士を退職した後にはパーソナルトレーナーとして働いた経験もあります。

結論からいうと、消防士の体力試験には全国一律の合格基準があるわけではありません。消防本部や採用年度によって、実施される種目や評価方法が異なります。

この記事では、元東京消防庁消防士としての経験をもとに、消防士採用試験で実施されることの多い体力試験の種目と、受験前にどの程度の体力をつけておきたいのか、具体的な対策方法まで解説します。

※採用試験の種目・実施方法は変更されることがあります。受験する消防本部の最新の採用案内を必ず確認してください。

 消防士の体力試験とは?

消防士採用試験では、筆記試験や面接試験などに加えて、体力試験が実施される消防本部があります。

消防士というと「体力がある人」「筋肉質な人」というイメージを持つ方も多いと思います。実際、災害現場では持久力や筋力が必要になります。

ただし、消防士の仕事は体力だけで成り立つものではありません。

火災・救助・救急などの災害対応だけでなく、資器材の点検、訓練、事務作業、立入検査など業務内容は多岐にわたります。

そのため、「筋力が強ければ消防士になれる」というわけではありません。

採用試験では、体力試験だけでなく筆記試験や面接試験なども含めて対策することが重要です。

そして、体力試験の種目や評価方法は消防本部によって異なります。

次に、消防士採用試験で実施されることの多い体力試験の種目を見ていきましょう。

消防士の体力試験に全国共通の合格基準はある?

消防士の体力試験には、全国の消防本部で共通する一律の合格基準があるわけではありません。

採用する消防本部によって、実施される種目や測定方法、評価方法は異なります。また、同じ消防本部でも採用年度によって試験内容が変更される可能性があります。

そのため、「握力○kgなら合格」「腕立て伏せ○回なら合格」といった数値だけを基準にして対策するのはおすすめできません。

まずは、自分が受験する消防本部の最新の採用試験案内を確認することが重要です。

実際に、2026年度(令和8年度)の採用情報を確認してみても、消防本部によって実施される体力試験には違いがあります。

2026年度の主な消防本部の体力試験

消防本部2026年度に確認できる主な体力試験
東京消防庁1km走・反復横とび・上体起こし・立ち幅とび・長座体前屈・握力・腕立て伏せ
横浜市消防局体力検査を実施。直近の公式な種目構成は腕立て伏せ・懸垂・SST(シャトル・スタミナ・テスト)
大阪市消防局握力・上体起こし・長座体前屈・反復横とび・20mシャトルラン・立ち幅とび
名古屋市消防局上体起こし・握力・長座体前屈・反復横とび・立ち幅とび・20mシャトルラン
福岡市消防局握力・上体起こし・長座体前屈・反復横とび・20mシャトルラン・立ち幅とび

※2026年度(令和8年度)の各消防本部の公式採用情報をもとに作成しています。試験種目や評価方法は年度によって変更される可能性があります。受験する際は、必ず各消防本部の最新の採用試験案内を確認してください。

このように比較すると、握力や上体起こし、反復横とび、立ち幅とびなどを採用している消防本部がある一方、東京消防庁では1km走や腕立て伏せ、横浜市消防局では直近の公式情報で懸垂やSSTが採用されるなど、試験内容には違いがあります。

つまり、「消防士になるには○○が何回できれば絶対に合格」という全国共通の基準はありません。

福岡市消防局は具体的な基準を公表している

消防本部によっては、体力試験の具体的な基準を公表している場合もあります。

2026年度(令和8年度)の福岡市消防吏員A採用試験では、次の基準が示されています。

種目男性女性
握力38kg(左右平均)23kg(左右平均)
上体起こし(30秒)24回17回
長座体前屈38cm38cm
反復横とび(20秒)47点39点
20mシャトルラン62回32回
立ち幅とび192cm141cm

福岡市では、上記の体力試験について1種目でも必要な基準を満たさない場合は不合格とされています。

ただし、この数値を「消防士全体の合格基準」と考えないようにしてください。

あくまでも福岡市消防局の2026年度採用試験で示されている基準です。

東京消防庁をはじめ、消防本部によって試験内容や評価方法は異なります。

体力試験は「最低基準ギリギリ」を狙わない

ここからは、元消防士としての私自身の経験を踏まえた考えです。

体力試験に明確な基準が設定されている場合でも、私は「最低基準を超えればいい」という考え方で対策することはおすすめしません。

消防士になれば、消防学校で訓練を受け、その後も火災・救助・救急などの現場で活動することになります。

採用試験を突破することだけがゴールではありません。

そのため、受験する消防本部の試験内容を確認したうえで、余裕を持ってクリアできる体力をつけておくことをおすすめします。

私自身、東京消防庁の採用試験を受けた当時は体力には比較的自信があったため、体力試験だけに時間を使うのではなく、筆記試験の対策にも力を入れていました。

体力に自信がある人は筆記試験に時間を使う。反対に、筆記試験は得意だけれど体力に不安がある人は、早めにトレーニングを始める。

自分の得意・不得意を把握して、採用試験全体で対策していくことが大切です。

消防士の体力試験で実施される主な種目

ここからは、消防士採用試験で実施されることの多い体力試験について、種目ごとの特徴とトレーニング方法を解説していきます。

なお、以下で紹介する回数や記録については、全国共通の「合格基準」ではありません。

受験する消防本部の公式な基準が公表されている場合は、その数値を最優先してください。

 消防士の体力試験で実施される主な種目

消防士の採用試験では、消防本部によってさまざまな体力試験が実施されています。

代表的なのが、

  • 握力
  • 上体起こし
  • 長座体前屈
  • 反復横とび
  • 立ち幅とび
  • 20mシャトルラン
  • 腕立て伏せ
  • 懸垂
  • SST(シャトル・スタミナ・テスト)

などです。

ただし、すべての消防本部で同じ種目を実施するわけではありません。

2026年度の採用試験を見ると、大阪市では「握力・上体起こし・長座体前屈・反復横とび・20mシャトルラン・立ち幅とび」の6種目が実施されています。

名古屋市でも同じ6種目が実施され、文部科学省の新体力テスト実施要項に準拠するとされています。

一方、横浜市では「腕立て伏せ・懸垂・SST(シャトル・スタミナ・テスト)」が実施されます。

このように自治体によって内容が違うため、まずは自分が受験する消防本部の最新の採用案内を確認することが重要です。

握力

握力は、握力計を使って手や前腕の筋力を測定する種目です。

大阪市や名古屋市などの2026年度消防採用試験でも実施されています。

【受験前の目安】

以前はこの記事でも「男性50kg・女性35kg」などを目安として紹介していました。

しかし、全国共通の合格基準ではありません。

消防本部によって評価方法や基準が異なるため、「○kgあれば必ず合格できる」と考えないようにしてください。

大切なのは、自分が受験する消防本部の最新情報を確認したうえで、余裕を持って試験に臨める状態にしておくことです。

【対策方法】

握力を鍛えるなら、ハンドグリップなどを使ったトレーニングが手軽です。

ただ回数をこなすだけではなく、握る・緩める動作を丁寧に繰り返していきましょう。

また、懸垂やぶら下がりなども握力や前腕の強化につながります。


上体起こし

上体起こしは、腹筋を中心とした筋持久力を見る代表的な種目です。

2026年度では、大阪市や名古屋市などで実施されています。

【受験前の目安】

回数だけではなく、決められたフォームで正確に反復できることが重要です。

消防本部によって実施方法や評価基準が異なるため、特定の回数を全国共通の合格ラインとして考えないようにしましょう。

【対策方法】

まずは30秒など時間を決めて、自分が正しいフォームで何回できるのか測ってみましょう。

普段のトレーニングでは、

「正しいフォームで30秒間実施 → 休憩 → 再度30秒」

といった形で、本番を意識した練習を取り入れるのがおすすめです。

腹筋だけでなく、プランクなどで体幹全体を鍛えておくのも有効です。


長座体前屈

長座体前屈は、主に身体の柔軟性を見る種目です。

大阪市・名古屋市の2026年度消防採用試験でも実施されています。

【受験前の目安】

長座体前屈についても、全国共通の「○cm以上なら合格」という基準があるわけではありません。

筋力や持久力だけでなく、柔軟性も体力試験の評価対象になる可能性があると考えて対策しましょう。

【対策方法】

柔軟性は一度のトレーニングで急激に伸ばすものではありません。

お風呂上がりなど身体が温まっているときに、

  • 太ももの裏
  • お尻
  • 股関節
  • 腰回り

を中心に継続してストレッチするのがおすすめです。

無理に反動をつけるのではなく、呼吸を止めずにゆっくり伸ばしていきましょう。


反復横とび

反復横とびは、左右へ素早く移動する能力や敏捷性を見る種目です。

2026年度では大阪市・名古屋市などで実施されています。

【受験前の目安】

反復横とびも、全国共通の合格回数が設定されているわけではありません。

単純な脚力だけではなく、素早く切り返す動きや身体のバランスも重要になります。

【対策方法】

実際にラインを引いて、本番に近い形で練習するのがおすすめです。

身体全体を大きく左右に振るのではなく、重心を低くして素早く切り返すことを意識します。

また、試験前には足首・アキレス腱・膝などを十分にウォーミングアップしておきましょう。


立ち幅とび

立ち幅とびは、助走をつけずに両足で踏み切り、前方へ跳ぶ種目です。

主に下半身の瞬発力を見るために行われます。

大阪市・名古屋市の2026年度消防採用試験でも実施されています。

【受験前の目安】

こちらも全国共通の合格距離はありません。

記録だけでなく、正しい方法で安定して跳べるように練習しておきましょう。

【対策方法】

立ち幅とびでは、

「腕の振り」「膝の曲げ伸ばし」「踏み切り」

を連動させることが重要です。

スクワットなどで下半身を鍛えるだけでなく、実際に立ち幅とびを繰り返して、腕の振りと踏み切りのタイミングを身につけましょう。

着地で後ろに手をつかないように、着地姿勢まで意識して練習するのがおすすめです。


20mシャトルラン

20mシャトルランは、20mの区間を一定の電子音に合わせて往復し、全身持久力を測定する種目です。

大阪市や名古屋市の2026年度消防採用試験でも実施されています。

【受験前の目安】

20mシャトルランについても消防本部によって評価方法が違います。

そのため、「○回できれば必ず合格」という考え方ではなく、できるだけ余裕を持って走れる状態を作っておきましょう。

【対策方法】

おすすめなのは、通常のランニングだけでなく、

インターバル走+シャトルラン形式の練習

を取り入れることです。

シャトルランでは持久力に加えて、20mごとに減速・方向転換・再加速を繰り返します。

普通の長距離走とは感覚が違うため、本番前には実際の20mシャトルランの形式でも練習しておきましょう。


腕立て伏せ

腕立て伏せは、上半身の筋力や筋持久力を見る種目です。

すべての消防本部で行われるわけではありませんが、2026年度の横浜市消防では体力検査の種目として実施されています。

【受験前の目安】

以前の記事では男性30回・女性15回などを紹介していましたが、これを全国共通の合格基準として考えるのは適切ではありません。

回数だけではなく、正しいフォームで継続して実施できることを意識しましょう。

【対策方法】

腕立て伏せが苦手な人は、最初から無理に回数を増やす必要はありません。

たとえば、

20回×3セット

25回×3セット

30回×3セット

というように少しずつ増やしていきます。

フォームが崩れた状態で50回行うより、正しいフォームで安定して繰り返せることを優先しましょう。


懸垂

懸垂は、背中・腕・握力など上半身の筋力を総合的に使う種目です。

消防採用試験ではすべての自治体が実施しているわけではありません。

ただし、2026年度の横浜市消防では体力検査として懸垂が実施されています。

【受験前の目安】

旧記事では男性15回・女性7回などを掲載していましたが、こちらも全国共通の合格基準ではありません。

受験する消防本部が懸垂を実施する場合は、その消防本部が示す最新の試験方法を確認してください。

【対策方法】

1回もできない人は、

「鉄棒にぶら下がる」

ところから始めても大丈夫です。

慣れてきたら、身体をゆっくり下ろすネガティブ懸垂や、補助を使った懸垂などを取り入れていきます。

消防の現場では物を引く、身体を引き上げるといった動作もあるため、試験の有無にかかわらず鍛えておいて損はないでしょう。


SST(シャトル・スタミナ・テスト)

横浜市消防を受験する人は、通常の20mシャトルランだけを想定しないよう注意してください。

2026年度の横浜市消防では、腕立て伏せ・懸垂に加えて「SST(シャトル・スタミナ・テスト)」が体力検査として実施されています。

消防本部によって体力試験の形式そのものが異なることが分かる代表的な例です。

横浜市消防を受験する場合は、最新の受験案内を確認し、通常のランニングだけではなく、試験内容に合わせたトレーニングを行いましょう。


1km走・1.5km走

過去には、消防採用試験や消防関係の体力測定として一定距離の持久走が行われるケースもありました。

ただし、2026年度の主要消防本部を見ると、20mシャトルランやSSTなど別の方法で持久力を評価するケースがあります。

そのため、「消防士採用試験では必ず1.5km走がある」と考える必要はありません。

【対策方法】

試験種目に長距離走がなくても、ランニングは消防士を目指すうえで有効な基礎トレーニングです。

まずは20~30分程度を無理なく走れる状態を作り、慣れてきたら、

  • ペース走
  • インターバル走
  • 坂道走
  • シャトルラン

などを組み合わせるとよいでしょう。

特に20mシャトルランやSSTがある場合は、一定距離を走り続ける練習だけでなく、加速・減速・方向転換を繰り返す練習も取り入れることをおすすめします。

消防士の体力試験対策は何をすればいい?

消防士を目指すからといって、毎日限界まで筋トレする必要はありません。

大切なのは、受験する消防本部の試験種目を確認して、その種目に合わせて準備することです。

たとえば大阪市を受験するのであれば、2026年度は握力・上体起こし・長座体前屈・反復横とび・20mシャトルラン・立ち幅とびが対象です。一方、横浜市なら腕立て伏せ・懸垂・SSTです。対策内容は当然変わってきます。

私自身、東京消防庁の採用試験を受験し、実際に消防士として勤務しました。また、消防士を退職した後にはパーソナルトレーナーとして働いた経験もあります。

その経験から考えても、体力試験対策で重要なのは、単純に筋肉をつけることではありません。

「筋力・筋持久力・心肺機能・柔軟性・敏捷性」をバランス良く鍛えることが大切です。

そして忘れてはいけないのが、消防士の採用試験は体力だけで決まるわけではないということです。

筆記試験や面接なども含めて、採用試験全体をバランス良く対策していきましょう。

※体力試験の種目・実施方法・評価方法は年度や消防本部によって変更される可能性があります。受験前には必ず志望する消防本部の最新の採用案内を確認してください。


まとめ|消防士の体力試験は志望先に合わせて対策しよう

消防士の体力試験は、全国一律の種目や合格基準が決められているわけではありません。

消防本部によって、握力・上体起こし・反復横とび・20mシャトルラン・腕立て伏せ・懸垂など、実施される種目や評価方法が異なります。

そのため、まずやるべきことは、自分が受験する消防本部の最新の採用案内を確認することです。

そのうえで、体力試験に向けて、

  • 筋力
  • 筋持久力
  • 心肺機能
  • 柔軟性
  • 敏捷性

をバランス良く鍛えていきましょう。

私自身、東京消防庁の採用試験を受験して消防士として勤務し、退職後にはパーソナルトレーナーとして働いた経験があります。

その経験から言えるのは、消防士になるために必要なのは、体力だけではないということです。

体力に自信があっても、筆記試験や面接試験の対策が不十分では合格には近づけません。

逆に、現時点で体力に自信がなくても、受験まで時間があるなら少しずつトレーニングを続ければ記録を伸ばすことはできます。

得意な部分はさらに伸ばし、苦手な部分は一つずつ対策していきましょう。

消防士を目指している方は、体力試験だけに偏らず、筆記・論文・面接まで含めて採用試験全体を対策することが大切です。

 

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筆記を突破したら論文・面接対策へ

消防士採用試験では、筆記や体力だけではなく、論文や面接の対策も重要です。

私自身、東京消防庁の採用試験を受験し、実際に消防士として勤務しました。

その経験をもとに、消防・警察官採用試験を受験する方向けに、論文試験と面接試験の対策をまとめています。

ネット上の一般論だけではなく、**実際に消防士になった経験を踏まえて「何を意識して対策すればいいのか」**をまとめています。

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