「消防士になったら、どんなことがきつい?」

「消防士を辞めたいと思う人は、何が嫌になる?」

「憧れて消防士になったけど、このまま続けるべきか迷っている」

消防士という仕事には、

人の命を救える。

安定した公務員。

やりがいがある。

仲間との絆が強い。

といった魅力があります。

私自身も東京消防庁で消防士として勤務していましたし、消防士という仕事そのものは好きでした。

一方で、

「これは正直しんどいな……」

と思ったことも当然あります。

この記事を最初に書いた2020年には、

飲み会。

上司との関係。

厳しい上下関係。

訓練。

などについてかなり率直に書いていました。

今振り返ると、消防士を経験した当時と、消防を辞めて別の業界も経験した今では見え方が少し変わっています。

そこで今回は、

元東京消防庁消防士として、実際に消防士をしていて嫌だったこと・きつかったこと5つ

を改めて整理します。

ただし最初に一つ。

この記事は、私が東京消防庁で勤務していた当時の実体験です。

現在の東京消防庁すべての消防署・職員が同じ雰囲気という意味ではありません。

時代。

消防署。

部隊。

上司。

人間関係。

によって職場環境は変わります。

その点を踏まえて読んでください。

結論|消防士はやりがいがある。でも「合う・合わない」はある

私が消防士として働いていて、特にきついと感じたのは次の5つです。

① 24時間勤務と睡眠不足

② 厳しい上下関係と若手の気疲れ

③ 訓練や指導がきつい

④ 飲み会・昔ながらの職場文化

⑤ 消防だけの世界で将来を考えにくくなること

です。

どれも、

消防士だから絶対に耐えなければいけない

という話ではありません。

逆に、

「これくらい普通」

と感じる人もいます。

大切なのは、

自分がその働き方をどう感じるか。

です。

① 24時間勤務と睡眠不足がきつい

消防士の大きな特徴が、

交替制勤務

です。

東京消防庁の現在の勤務例では、ポンプ隊・救急隊・特別救助隊などの災害対応職員は、

8時30分から翌朝8時40分

まで勤務します。

21日を1サイクルとして、月10日程度の当番勤務を行う例が紹介されています。

一見すると、

「月10日しか出勤しないなら楽じゃない?」

と思うかもしれません。

でも、1回の勤務は翌朝まで続きます。

夜になったら普通に寝られるわけではない

消防署には仮眠時間があります。

しかし、

火災。

救急。

救助。

その他の災害。

の出場指令が入れば、当然起きて出場します。

東京消防庁の現役ポンプ隊員も、採用サイトのインタビューで、交替制勤務に慣れるまで仮眠中も災害が気になって眠れず、非番日は一日中寝ていたと話しています。

これは私自身もよく分かります。

夜間の出場が続けば、

勤務が終わった朝にはかなり疲れています。

非番になって、

「よし遊びに行こう!」

ではなく、

帰って寝たい。

という日もあります。

消防士の睡眠については、こちらの記事で詳しく解説しています。

消防士の睡眠時間は何時間?夜中は何をしているのか元消防士が解説

ただし平日を使えるメリットもある

もちろん悪いことだけではありません。

非番・休日を使えば、

平日の買い物。

旅行。

趣味。

役所。

病院。

などへ行きやすいメリットがあります。

私はこの勤務体系が嫌いだったわけではありません。

むしろ慣れると、平日を自由に使えるのはかなり便利でした。

だから、

交替制勤務そのものが悪いというより、自分の身体に合うか

がポイントです。

② 厳しい上下関係と若手の気疲れ

私が消防士1年目に特に疲れたのが、

周囲にずっと気を配ること

でした。

旧記事でも、

「目配り・気配り・心配り」

という言葉を書いています。

消防署では、

先輩より早く動く。

必要なものを準備する。

掃除。

食事当番。

資器材。

通信勤務。

その他の担当業務。

など、若手が覚えることはかなりあります。

「今何をすべきか」を常に考える

例えば、

自分はトイレ掃除をしている。

その間に別の先輩が別の雑用をしている。

すると、

「何で先輩にやらせてるんだ」

と注意される。

私自身、

「いや、俺も別の仕事してたんですけど……」

と思ったことがあります(笑)。

でも、消防を経験した今なら、

先を読む。

周囲を見る。

人が何を必要としているか察知する。

という能力が、災害現場でも重要なのは理解できます。

問題は、

理由を説明されず、ただ怒られるだけだと若手には意味が分からない

ことです。

「年下の先輩」も普通にいる

消防では入庁した期による先輩・後輩関係があります。

例えば、

22歳で大卒入庁。

その消防署には20歳の高卒入庁3年目。

ということもあります。

年齢では自分の方が上でも、

消防士としては相手が先輩。

これは特別おかしなことではありません。

私は年下の先輩がいること自体は全く気になりませんでした。

ただ、

階級・期・役職を意識した組織文化

に慣れるまでは少し時間がかかりました。

③ 訓練や指導がきつい

私は筋トレは好きでした。

でも、

訓練は嫌いでした(笑)。

旧記事でもかなり正直に、

訓練はめちゃくちゃ嫌だった

と書いています。

理由は、

できない。

怒られる。

焦る。

もっとできなくなる。

ということがあるからです。

指示どおりやっても怒られると感じたこともあった

例えば私自身、

隊長から指示されたことをやっているつもりなのに、

「何やってるんだ」

と注意された経験があります。

当時は、

「いや、今やれって言いましたやん!」

と思っていました(笑)。

もちろん今振り返れば、

自分が指示を正確に理解できていなかった可能性もあります。

災害活動では、

少しのミスが、

自分。

仲間。

要救助者。

の安全に関わります。

そのため訓練が厳しくなる理由自体は理解できます。

ただし、

必要な指導と、人格否定・暴力・嫌がらせは別物です。

ここを一緒にしてはいけません。

厳しい指導とパワハラについては、こちらの記事で詳しく整理しています。

東京消防庁のパワハラ・いじめの実態と対処法を元消防士が解説

④ 飲み会・昔ながらの職場文化が合わなかった

ここは旧記事でも一番最初に書いていた部分です。

私が勤務していた当時、

若手の飲み会では、

一気飲みを求められたり、飲酒を煽られたりする場面

がありました。

私はお酒自体は好きでした。

でも、

飲みたいから飲む

のと、

場の空気で飲まないといけない

のは別です。

これは正直かなり嫌でした。

なお、これは私が勤務していた当時の経験であり、現在の東京消防庁全体の飲み会文化が同じだという意味ではありません。

そして当然ですが、

一気飲みや飲酒の強要は危険です。

上司の「昔はこうだった」話が長い

もう一つ嫌だったのが、

飲み会で延々と上司の武勇伝を聞くこと。

です(笑)。

しかも、

「それ前回も聞きました」

という話が結構ありました。

もちろん、

私は先輩から話を聞くこと自体が嫌だったわけではありません。

救助隊に行った人。

ロープが上手い人。

消防技術に詳しい人。

サーフィンをしている人。

など、

自分が知りたい話ならこちらから聞きに行っていました。

嫌だったのは、

一方的に話を聞かされる関係です。

今振り返ると、

上司・部下に限らず、

まず信頼関係を作ることが大切

だと思います。

これは消防を辞めた後、別の仕事で人を管理する立場を経験して、さらに強く感じるようになりました。

⑤ 消防だけの世界にいると将来のキャリアを考えにくかった

これは旧記事を書いた当時より、

消防を辞めた今の方が強く感じること

です。

消防士は専門性の高い仕事です。

火災。

救急。

救助。

予防。

防災。

消防法令。

など、消防の中では多くの能力が身につきます。

一方で、

「もし消防を辞めたら、自分は民間企業で何ができるんだろう?」

という不安が出ることがあります。

私自身も消防を辞めるとき、

簡単に決断できたわけではありません。

難しい試験に合格して消防士になった。

安定した公務員。

給料も大きな不満はない。

周囲からも、

「もったいない」

と思われる。

それでも、

自分はこのまま一生消防士なのか?

と考えることがありました。

私は最終的に約3年半で東京消防庁を退職しましたが、

消防士という仕事が嫌いだったから辞めた

という単純な理由ではありません。

消防を続ける人生以外も経験してみたいという気持ちがありました。

消防士を辞めた後のキャリアについてはこちらで詳しく書いています。

消防士から転職したい人へ|元東京消防庁消防士が転職先・辞めた後を解説

「消防士を辞めたい」と思うこと自体は珍しいことではない

消防士になるまでには、

筆記試験。

論文。

面接。

体力試験。

消防学校。

など、多くの壁があります。

だから一度消防士になると、

「せっかくここまで来たんだから辞めちゃダメだ」

と思いやすくなります。

でも、

消防士も仕事です。

向いている人もいれば、

合わない人もいます。

生活環境が変わることもあります。

結婚。

子育て。

体力。

家庭事情。

価値観。

キャリア。

全部変わっていきます。

一度消防士になったからといって、

一生消防士でなければならないルールはありません。

ただし「嫌なことがあった=すぐ辞める」でもない

ここも重要です。

私は、

「消防が嫌ならすぐ転職しよう!」

とは思いません。

仕事にはどの業界でも嫌なことがあります。

人間関係。

上司。

残業。

給与。

顧客。

プレッシャー。

完全にストレスがない仕事はほぼありません。

だから、

今の問題が「消防という仕事そのもの」なのか、「今の職場・上司・部隊」なのか

を分けて考えた方がいいです。

今の職場だけが原因なら異動で変わる可能性もある

東京消防庁には、

交替制勤務。

毎日勤務。

警防。

救急。

救助。

予防。

本庁。

などさまざまな仕事があります。

現在の採用情報でも、消防官は希望する職種やライフステージに合わせて毎年勤務形態等の希望を出せることが紹介されています。

ですから、

「今の職場が合わない=消防士そのものが合わない」

とは限りません。

残業や勤務時間に悩んでいるなら、まず仕組みを知る

消防は特殊な勤務体系です。

そのため、

「これは残業なの?」

「勤務時間外なのに訓練するの?」

と疑問を持つ人もいます。

消防士の時間外勤務についてはこちらで詳しく解説しています。

消防にサービス残業はある?元消防士が実際の働き方を解説

消防士を辞める前に考えてほしい5つ

① 嫌なのは消防そのものか?

火災。

救急。

救助。

市民対応。

これ自体が嫌なのか。

それとも、

上司。

人間関係。

勤務署。

だけが嫌なのか。

まず分けます。

② 異動で解決する可能性はないか?

部署や部隊が変わるだけで、働きやすさが大きく変わる可能性があります。

③ 休む必要はないか?

判断力が落ちるほど疲れている状態で、

「辞める・辞めない」

という人生の大きな決断を急がない方がいい場合もあります。

④ 消防以外に何をしたいのか?

「消防から逃げたい」

だけでは転職後も悩む可能性があります。

何をしたいのか。

何が得意なのか。

どういう働き方をしたいのか。

を整理します。

⑤ 転職市場で自分がどう評価されるか調べる

これは、

辞表を出す前

にやってください。

消防士として働きながら、

求人を見る。

必要な資格を調べる。

年収を確認する。

自分の経験を棚卸しする。

これだけでもかなり違います。


辞める前に「自分の選択肢」だけ確認しておく

消防士を辞めるかどうか決めていなくても、

転職市場を確認することはできます。

むしろ、

「消防以外ではどんな仕事に行ける?」

「今の年収からどれくらい変わる?」

「自分の経験は民間で評価される?」

を知ってから判断した方がいいです。

転職サイトを見る=転職する

ではありません。

選択肢を知ったうえで、

やっぱり消防を続ける

という結論になってもいいと思います。

消防を辞める前に、まず自分の選択肢を確認する



消防士から民間へ行っても通用する?

私は、

通用すると思います。

ただし、

「元消防士です」

だけで企業が採用してくれるわけではありません。

消防士には、

チームワーク。

危機管理。

安全管理。

体力。

責任感。

報告・連絡・相談。

緊急時の判断。

住民対応。

など、民間でも活かせる経験があります。

大切なのは、

消防用語のまま話さず、民間企業でも分かる言葉に変換すること

です。

例えば、

「ポンプ隊で活動していました」

だけでなく、

「複数人で役割を分担し、緊急時でも状況を確認しながら安全に業務を進める経験をしてきました」

と説明する。

これなら民間企業にも伝わります。

私は消防を辞めて後悔している?

私は消防を辞めたことを、

失敗だったとは思っていません。

消防士だったから経験できたことがあります。

そして、

消防を辞めたから経験できたこともあります。

逆に、

「消防を続けていた人生だったらどうなっていたかな」

と思うこともあります。

人生なので、

どちらを選んでも100%正解だったかは分かりません。

だから私は、

消防を辞めることを勧めたいわけではありません。

消防を続けたいなら続ければいい。

救助隊を目指したいなら挑戦すればいい。

別の部署に行きたいなら希望を出せばいい。

そして、

違う仕事に挑戦したいなら、

それも選択肢の一つです。

大切なのは、

周囲ではなく、自分自身が納得して選ぶこと。

です。

消防士を辞めたい人によくある質問

消防士はきつい仕事ですか?

災害対応、交替制勤務、夜間出場、訓練など体力的・精神的に負荷のある仕事です。

一方で、平日の非番・休日など消防独自の勤務体系をメリットと感じる人もいます。

消防士は夜ちゃんと眠れますか?

仮眠時間はありますが、災害出場があれば起きて活動します。

東京消防庁の現役職員も、勤務に慣れるまでは仮眠中も不安で眠れず、非番日に寝ていた経験を紹介しています。

消防士は上下関係が厳しいですか?

私が勤務していた当時は、期や階級を意識する場面が多くありました。

ただし、消防署や人によって雰囲気は異なるため、東京消防庁全体を一括りにはできません。

消防士を辞めたら後悔しますか?

人によります。

辞める前に、

今の問題が異動等で解決できないか。

消防以外に何をしたいのか。

転職後の給与・仕事内容。

まで調べたうえで判断することをおすすめします。

消防士から民間企業へ転職できますか?

できます。

私自身も東京消防庁を退職した後、消防以外の仕事を経験しています。

詳しくはこちらの記事で解説しています。

消防士から転職したい人へ|転職先・辞めた後のリアルを元消防士が解説

消防を続けるか迷っているなら、辞める前に比較する

消防士を辞めてから、

「思っていた転職先がなかった」

となるのが一番困ります。

そのため私は、

在職中に転職市場を見る

ことをおすすめします。

求人を見る。

年収を見る。

必要な資格を見る。

自分の市場価値を知る。

そのうえで、

消防を続ける。

異動を待つ。

資格を取る。

転職する。

を選べばいいです。

今すぐ消防を辞める必要はありません
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まとめ|消防士にも嫌なことはある。それでも辞めるかは別の話

私が東京消防庁で消防士として働いていて、特にきついと感じたのは、

① 24時間勤務と睡眠不足

② 厳しい上下関係と若手の気疲れ

③ 訓練や指導

④ 飲み会・昔ながらの職場文化

⑤ 将来のキャリアへの迷い

でした。

ただし、

私は消防士という仕事そのものを嫌いだったわけではありません。

人命救助。

仲間。

災害現場。

消防学校。

訓練。

消防にいたから経験できたことはたくさんあります。

そして給与についても、旧記事で書いたとおり、当時の私は大きな不満を持っていませんでした。

だから、

「嫌なことがある=消防士を辞めるべき」

ではありません。

どんな仕事にも嫌なことはあります。

でも、

毎日苦しい。

この働き方を続ける未来が見えない。

別の仕事に挑戦したい。

という気持ちが長く続くなら、

一度、消防以外の選択肢を調べてみてもいい

と思います。

私自身、

消防士として働いた人生も、

消防を辞めた後の人生も、

両方経験しました。

その立場から伝えたいのは、

消防に残ることも、消防を辞めることも、それ自体が正解ではない。

ということです。

自分が、

どんな仕事をしたいのか。

どんな生活をしたいのか。

どんな人生にしたいのか。

そこから逆算して選んでください。