消防士リアルエピソード

消防士のリアルな現場 第二話

消防士リアルエピソード

第二話 白銀世界での救出活動

消防学校時代は、卒業前の訓練中の事故により、自分は左肩に後遺症が残ったまま、、、、

そして、同期は2011年の10月には配属先の所属へと、飛び立って行った。

その日は、生憎の台風直撃、ニュースでは暴風域警報が出ていた。

教官室で飛び交っていた会話は、こんな感じ。

「地震と共に、嵐のように入庁して、嵐と共に去って行ったな〜」

「調子に乗って羽目を外さなければいいけどなぁ〜」

そんな会話を横耳で、聴きながら、自分は教官室の片隅が自分自身の職場の定位置となった。

厳しく、時には和気藹々と指導してくださった教官や助教の側で、仕事を共にするのは非常にいい経験になった。恐らく、東京消防庁でもこんな経験をしているのは、ほんの一握り。

ある意味で、、、、、笑

そして、週に一度のリハビリも順調に進み、思っていた以上に回復は早かった。

ただ、手術をした方は、動作と共にギシギシと音をたてていた。自分の身体なのに、自分の身体じゃ無いような変な感覚があった。

何はともあれ、自分はもう行けると感じ、お医者さんにも許可を貰い、少し痛みを抱えながらも後期生との訓練の日々、訓練のサポートに回り、寮は後期生と同じところで、寝食をした。

幸いなことに、後期生であるが、自分より年齢は上の常識はある方々が多く気を使って頂いたり、プライベートも仲良くして頂いた。人間関係もかなり良好で、暖かく迎え入れてくれた方々に、本当に感謝の日々だった。

そんな調子で、時は流れ

怪我の状態もそれなりには良くなり、同期とは約4ヶ月遅れで、いよいよ現場の消防署への配属が決まる日も迎えた。

「現場に笑顔はない」

と言った教官もその時は少し微笑んでるのか分からないけど、、、

「よし!!

お前も卒業!!配属先への拝命を受けて来い!!」

こんな調子で、いつも笑わない、厳しさと優しさの両輪で指導してくださる教官は、相変わらずの鬼瓦だったが、心の中で「なにはともあれ、卒業できて良かったな」と背中を押してくれているように感じた。

そして、拝命先の発表

順次後期生の拝命先が呼ばれて行く、自分は最後の発表となり、ワクワクドキドキしていた。救助隊がある消防署を祈っていた。

いよいよ、担当していた助教が読み上げてくれた。

「原消防士。。。。。。

小平!!!」

「はい!!!!!」

『えっ〜〜〜〜〜どこ〜〜〜〜〜〜』(心の声)

東京の土地感覚はまず分からないので、、、、、

周りの自分が救助隊志望という事を知っていたので、微妙な反応なのを感じ取った。

ともあれ、決まったものは、変わらず何もなく予定通り小平消防署へ

ちょっと、間違えでしたを期待していたが、、、、笑

そして、配属と同時期に、東京地方には大寒波が訪れていた。

深々と夜も更けて行き、目が醒めると辺り一面は、白銀世界へと変貌していた。

なかなか、東京でも稀に見ない積雪だったそうで、積雪1メートル近くにも上っていた。

先輩方は冗談混じりで、

「これで救助活動でも出たら、半端ね〜な〜」

とボヤいていた。

その矢先に、出場指令が鳴り響く。

「PA連携、〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

※PA連携・・・ポンプ隊(pomp)と救急隊(ambulance)の頭文字を取っている。2隊が連携して、急病人の救急活動に当たること。〜〜〜〜は出場先の住所

自分は、配属先の業務内容に慣れる間も無く、いきなり来た。

自分が出場した中でもベスト5ぐらいに入るぐらい過酷な現場を経験することになる。

この時の自分はまだ知る由もなかった。

ポンプ車の車内で、要救助者は心肺停止であることを告げられる。

そして、現場に到着後自分は、衝撃の光景を目にする。

一戸建ての家の前に、車が停まっており、周りは雪で覆われている。運転席の中に、高齢男性が心肺停止状態で倒れている状態。通報は、奥様であった。

奥様の証言では、「夫はちょっと車で出てくると言って出ていき、戻って来ないから、外に出てみると、車は停まっており、エンジンも付けっ放しであった」とのことだった。恐らく、心筋梗塞であろう。

寒いこの時期は、朝方の心肺停止事故は頻発している。

さて、ここから必死の救出活動劇です。

まず、お父さんに呼びかけます。

「お父さん大丈夫ですか?大丈夫ですか?」

何度か呼び続けたが反応がない、呼吸と脈動の確認したが、これもない

「反応レベル300」

「心臓マッサージとAED準備」

自分は急いで、AEDの準備に取り掛かった。そして、もう一人の隊員は心臓マッサージに取り掛かる。そして、AEDの衝撃を一度発動。実はこの時間での、救急隊は出動件数が多く、到着が遅れていた。

僕ら、ポンプ隊が出来る事には限界があり、どうしよも無い状態になっていた。

救急隊が到着するまでは、とにかく心臓マッサージに人工呼吸に保温に必死だった。

消えかけている命に少しでも火が灯れば良いと、少しの希望を抱えながら、、、、人命救助を続けた。

そして、救急隊の到着連絡が入る。

要救助者の容態、意識状況は変わらず、、、

救急車へ搬送することになる。

すると、救急隊からの要望を、隊長から告げられる。

「救急車はこの雪で、ここまで来れないみたいだ。」

「布担架で運ぶぞ」

隊長も自分たちも必死だった。目の前の人の命を助けるために!!

※布担架は、メインストレッチャー(車輪付き)が使用できない狭い箇所でよく使用する。車輪も無く腕の腕力だけで支える

おおよそだが、150メートルぐらいは、腕の力だけで搬送したのではないか。

半分ぐらいの所で、早くも自分の腕は限界に近付いており、左肩の痛みも出ていた。

日頃トレーニングをしているとはいえ、なかなか過酷な状況下に置かれていた。

まず、昨夜まで遡ると、夜中まで体力錬成と訓練をしており、睡眠時間は2時間ぐらい、からの早朝早々の出場ということもあり、体力は正直言ってすり減っている時でもあった。しかも、配属間も無くメンタリティもやられていた。って言うのは、言い訳に出来ないが、かなりギリギリの状態であった。

ともあれ、無事にメインストレッチャーまで搬送完了し、救急車まで無事に辿り着いた。

消防士の人命救助の現場では、日々このようなドラマが起こっている。

そして、自分が左肩の後遺症が残っているとかは、自分の中の問題であって、災害現場で助けを求めている人には、自分のそんな状況など関係はない事。左肩が痛いから、目の前の人命救助ができませんでしたでは、消防士として情けない。人命が掛かっている。命に変えられるものはない。だから、自分は左肩の後遺症を言い訳にはしたくなかった。

左肩が駄目なら、事務員として引っ込んどけと言われるのが落ちだから。。。

ここから、自分は更なる左肩の強化を積み重ねて行く事になる。

また、この救出劇は序章に過ぎなかった。

これから起こる現場は、自分自身も想像していなかった現場の連続。

人の生きる意味とは???

家族とはなんなのか???

仲間の存在とは???

人命救助=消防士の存在価値とは???

深く考えさせられる日々が待ち受けている。



次回、第三話 命の火を灯す

お楽しみに〜

予備知識

救急隊は、PA連携の現場。通常は、ポンプ隊と同時着ぐらいで、この間に搬送先の病院の選定や家族の方に病院までの付き添い以来や状況を聴取する。救急救命士の資格を所持している隊員は要救助者の状況を観る。

ポンプ隊は、救急活動の後方支援がメイン。