消防士リアルエピソード

消防士のリアルな現場 第三話

第三話 命の火を灯す

自分は、小平消防署に配置されてから、業務内容にも慣れて来ており、相変わらずの毎日を過ごしていた。朝の8時15分から大交代という当番の交代を行う引き継ぎの時間がある。

その交代前に、勤務に当るまでの準備をする訳ですが、自分はいつも7時過ぎごろに、出勤し実施するルーティンがあった。それが、腕立て伏せと懸垂を限界まで、追い込むというルーティン。それから、大交代の引き継ぎに入っていた。

ただ、体育会系独特の風潮がかなり強い消防世界!!

偶に、チクチク嫌味を言われることもあった。

「お〜やってるね〜。お前交代の準備できているのか??」

「そんなんやってる暇あるんやったら、先に準備しろよ!!」

その他には、勤務明けで、自分の仕事も全て終わらせて、上司にはお先に失礼しますと、一声かけて帰っているにも関わらず、先輩からはこう言われる。

「帰るん早くないか??帰る時、俺に一声かけろよ。」

その意味が全く自分には理解ができなかった。

自分の直属の上司でも無く、同じ勤務日で働いていると言うだけで、なんで少し先輩に帰る前に一声掛けなければいけないのか?直属の上司や先輩なら理解できるが、正直言って意味がわからなかった。

と言う感じに、自分自身は周りのことを、全然考えておらず、自分が目指したいと言うレスキュー隊に必要な事しか、しておらず素直さを失っていた。ただ自分の中での揺るぎない心は萌え続けていた。

それは、

人命救助をする事

綺麗事に聞こえるかもしれないが、自分の中では燃えていた。誰から何を言われようと、自分は身体が勝手に反応していた。

第三者から見れば、「アイツはストイックだな〜。よくやれるな。」

「逝き急ぐなよ」と言われたことがある。

あの時から、いつもただ目の前の事に一生懸命だった。真っ直ぐに直向きだった。

時には、周りの声が聴こえず、自分の想うように、突き進むこともあった。

判断を見誤り、仲間に迷惑を掛けることもあった。

そんなある日の、PA連携での出場指令が流れる。

「PA連携!!PA連携小平市〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

自分は慣れた手つきで、出場先の住所を確認し、AEDを車載を完了する。

出場先の情報は、車内では知らされず、どうのような現場が待ち受けているのかわからず、、、

現場に到着した。

到着後、一軒家の建物の玄関を開けた途端に、飛び込んだ光景に驚愕した。

首吊り自殺をして、意識を失っている50代半ばの女性が、玄関前に横たわっている。

すぐさま、AEDの準備を行い、自分自身は心臓マッサージ(CPR)を実施。

これが、初めての心臓マッサージとなった。

当たり前の話だが、訓練中とは違い、かなりの緊張感があり怖さもあった。

自分に人命の生死がのしかかっていた。すると継続していると、まず自分に変化が現れた。

心臓マッサージをしている女性の肋骨が折れたような感覚があった。

この時、自分自身が少し吐き気があった。初めての出来事に、驚きと焦りがあったが、そのまま心臓マッサージを継続した。人命を優先するには、こちらの方が最優先だった。

そして、恐らく20分ぐらいは実施したであろうと思われる。

救急車に搬送され、病院へと搬送された。

それまで、女性は息を吹き返すことはなかった。

悔しかった。なかなか人命を救助すること、消えかかった命の火を灯すことはそう簡単じゃないことを知った。自分自身の無力さに落ち込んでいた。

そんな時だった。

自分は、その夜も車庫で筋トレをしていた時、救急隊の先輩から声をかけられた。

「今日の昼間の女性、病院に到着した後、息を取り戻したよ」

「こんなのなかなか無いよ」

「お前、一生懸命だったもんな」

「よくやったよ。大したもんだ。」

自分はその時、知りました。

自分は甘かった。自分は正直言って、人命を救助すること、命を灯すことは簡単だと想っていた。

普通だと想っていた。でも違う。

本当は人の命を救う方が、奇跡なんだってこと。

生きていることは、何不自由なく生きていることは奇跡に近い。

ご飯を美味しく食べていること、家族がいること、家があること、、、

そして、読書やセミナーに参加して、学ぶことができること。

本当に幸せなこと。最高の贅沢だと言うこと。

特に心肺停止になった人命を救うことは、時間とともに生存率は下がっていく。

命を救う初めての経験になった。

改めて、命の大切さ、人の命について考えさせたれる1日となった。

最後に、隊長から言われた一言

「一生懸命とか必死って、伝わるんだよ。お前の一生懸命さが、きっと伝わったんだよな。俺にもそれは伝わったよ。その気持ち、その心をずっと忘れるなよ。」

時として、科学では証明できないような、出来事が起こる奇跡というものが、世の中には存在する。その奇跡のような体験を起こせる人、奇跡の体験に出会う人とはどういう人なのか?

自分は、心だと感じる。

テレパシーのような、心は時として、人の心を動かし伝わる。

それが、全てでは無いにしても、時に奇跡は起こる

それは

自分はこれからも、自分の心に火を灯し続ける。

もし、隣に消えかかった心があるなら、自分の心の火を移せるような、大きな火に育て続ける。

次回、第四話 自分を見失う

では、次回もお楽しみに〜