【2026年版】消防士にサービス残業はある?当番明けに帰れないのは普通?元東京消防庁消防士が解説
「消防士って24時間勤務だけど、当番が終わったらすぐ帰れるの?」
「当番明けに訓練や事務処理をするのは残業?」
「上司が帰らないと若手も帰れないって本当?」
消防士を目指している人だけでなく、現在消防で働いている人からも、このような質問をもらうことがあります。
以前、実際に東京消防庁で働いている方から、こんな相談をいただきました。
「当番明けに毎回2時間くらいサービス残業があります。上司が帰るまで帰れない雰囲気もあり、自分が事務所に残っていると他の部の仕事までしなければなりません。消防ではこれが普通なのでしょうか?」
消防独特の職場文化を知っている人なら、
「分かる……」
と思う部分があるかもしれません。
私自身も東京消防庁で勤務していたとき、多少なりとも似たような経験があります。
ただ、最初に結論を言います。
結論|「消防だからサービス残業が当たり前」ではありません
火災や救急などの災害対応によって勤務時間を超えることは当然あります。
消防という仕事の性質上、
「8時30分になったから火災現場から帰ります」
というわけにはいきません。
しかし、
災害対応による超過勤務
と、
昔からそうだからという理由で無給で残ること
はまったく別の話です。
特に、
「上司が帰っていないから帰れない」
「仕事は終わっているけど若手だから残る」
「当番明けに当然のように事務仕事をさせられる」
という状態まで「消防士なら普通」と考える必要はありません。
ここは分けて考えた方がいいです。
そもそも消防士はどういう勤務をしている?
東京消防庁の消防署では、交替制勤務の場合、朝の8時30分に大交替を行い、前日の勤務員から次の勤務員へ申し送りをします。
勤務中には資器材点検、訓練、水利調査、立入検査、事務処理、そして火災・救急・救助などへの出場があります。東京消防庁公式サイトでも、この勤務の流れが紹介されています。
つまり基本的には、
決められた勤務時間の中で訓練や事務処理を行う
のが前提です。
もちろん、8時30分直前に火災が発生したり、救急現場から帰署できなかったり、大規模災害が発生したりすれば、その時間を超えて活動することがあります。
それが消防という仕事です。
問題になるのは、災害でも緊急業務でもないのに、
「なんとなく帰れない」
状態が常態化しているケースです。
東京消防庁にも「超過勤務」という制度がある
ここは、昔の記事にはなかった重要な情報なので追加します。
東京都の「職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例」では、公務上、臨時または緊急の必要がある場合に、正規の勤務時間外に勤務を命じることができると定められています。
さらに施行規則では、超過勤務について原則として、
事前に勤務を命じ、勤務後に実際の勤務状況を確認する
という仕組みになっています。
緊急で事前に命令できなかった場合も、職員から申出があり、その勤務の事実が確認できれば、所定の手続をとったものとして扱える規定があります。
つまり、
「消防士だから時間外勤務という概念がない」わけではありません。
消防士にも残業代はある
東京都の給与条例では、正規の勤務時間を超えて命じられた勤務について、超過勤務手当を支給する仕組みがあります。
基本的な超過勤務については勤務時間1時間当たりの給与額に所定の割増率を掛ける制度になっており、深夜帯についてはさらに加算があります。
ですから、
「公務員だから残業代がない」
「消防士だから当番明けの残業は全部タダ」
という理解は正しくありません。
ただし重要なのは、
その時間に何をしていたのか、誰の指示だったのか、本当に業務だったのか
という点です。
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「サービス残業かどうか」は状況を分けて考える
消防署では、この線引きが曖昧になりやすいと私は感じます。
例えば次のようなケースです。
| 当番明けの状況 | 考え方 |
|---|---|
| 火災・救急対応が長引いた | 業務としての超過勤務を確認すべき |
| 上司から事務処理を指示された | 業務時間としての取扱いを確認すべき |
| 訓練への参加を上司から求められた | 「自主訓練」と決めつけず勤務扱いを確認 |
| 自分の意思で個人訓練をした | 必ずしも超過勤務とは限らない |
| 仕事はないが「上司がいるから残る」 | 業務とは別に、職場文化として見直す余地あり |
| 他係の仕事を当然のように頼まれる | 指示内容・勤務扱いを確認する |
消防では、
「自主訓練」
という言葉が非常に難しいんですよね。
本人が、
「もっとロープ結索を練習したい」
「救助技術を身につけたい」
と思って自発的に訓練するのであれば話は分かります。
一方で、
「若手なんだから明けでも訓練するのが当然」
「帰ったらやる気がないと思われる」
「人事評価に響くぞ」
といった圧力の下で実質的に参加を求められているのであれば、「完全に本人の自由」とは簡単には言い切れません。
個別の勤務時間該当性は実際の指示や状況で変わりますが、少なくとも、
何でもかんでも「自主訓練だから無給」で済ませていいわけではない
と考えた方がいいでしょう。
私が東京消防庁で経験した「帰りづらい文化」
私自身、東京消防庁に勤務していた頃、
「帰るときは俺に一言挨拶してから帰れ」
と、直属ではない先輩から言われたことがあります。
最初の数回は言われた通りにしていました。
ただ、
「なぜ、この人の許可をもらわないと帰れないんだ?」
と思うようになり、途中からやめました。
その後、別の勤務場所へ異動すると、そんな文化自体がなくなりました。
ここで感じたのは、
「消防全部がそうなのではなく、職場や人による部分が大きい」
ということです。
東京消防庁という巨大な組織でも、消防署・係・上司によって雰囲気は違います。
これは消防に限らず、どの会社・組織でも同じでしょう。
「上司が帰るまで帰れない」は普通なのか?
私は普通だとは思いません。
自分に担当業務が残っている。
引継ぎが終わっていない。
災害対応が継続している。
チームで処理しなければならない仕事が残っている。
こういった事情があれば当然残ることもあります。
しかし、
仕事が終わっているのに「新人だから」「上司が帰っていないから」という理由だけで毎回1〜2時間残る。
これは別問題です。
しかも24時間勤務を終えた消防職員の場合、当番明けは身体もかなり疲れています。
救急出場が重なった日は、夜ほとんど眠れていないこともあります。
その状態で意味のない居残りを続けることが、本当に消防活動の質を高めるのか。
私は疑問です。
ただし「自分の仕事を残して帰る」のとは違う
ここは誤解してほしくありません。
「サービス残業はおかしい」
という話と、
「時間になったから何も言わず帰ればいい」
という話は別です。
消防は完全な個人プレーではありません。
隊や係で仕事をします。
自分の担当業務が残っていたり、周囲が自分に関係する仕事をしていたりするのであれば、最低限確認することは社会人として必要です。
私なら、
「自分の仕事は終わりましたが、何か手伝えることありますか?」
と一言聞きます。
必要なければ、
「大丈夫、帰っていいよ」
となるでしょう。
仕事があれば、
「これだけお願い」
となるでしょう。
そして業務として勤務時間を超えるのであれば、
超過勤務としてどう扱われるのか確認する。
この方がずっと健全です。
毎回2時間残るなら、一度記録してみる
ここからは、現在まさに悩んでいる消防士へ。
「なんとなくおかしい」
だけだと、自分自身も判断しづらくなります。
そこでおすすめなのが、感情ではなく事実を整理することです。
- 何月何日に何時まで残ったのか、何をしていたのか、誰から何を言われたのか、超過勤務として処理されたのかを数週間記録する。そのうえで直属上司に「この業務は超過勤務扱いになりますか?」と冷静に確認する。改善しなければ別の上司や人事・職員関係の相談ルートへ相談する。威圧的な言動や評価を使った圧力などがある場合は、勤務時間の問題とハラスメントの問題を分けて相談する。
これだけでもかなり違います。
いきなり、
「サービス残業ですよね?」
と喧嘩腰に言う必要はありません。
まずは、
「これは勤務扱いですか?」
と確認すればいいのです。
消防士1年目だから我慢するべき?
以前の記事では、
「次の後輩が入るまでの耐えどきかも」
と書いていました。
2026年版では、この表現は削除します。
若手だから理不尽な働き方を我慢する、という考え方を無条件に勧めるべきではないからです。
もちろん新人時代は覚えることが多いです。
先輩より早く出勤して資器材を確認したり、自分から訓練したり、勉強したりする人もいます。
その努力自体を否定するつもりはありません。
私自身、消防士になるなら訓練は必要だと思っています。
ただし、
成長のために自分で努力すること
と、
組織が無給の時間外勤務を当然視すること
は分けて考えるべきです。
消防の「昔からこうだから」は疑っていい
消防には、良くも悪くも昔から受け継がれている文化があります。
規律。
上下関係。
礼儀。
チームワーク。
危険な現場で命を預け合う職業だからこそ、これらは非常に重要です。
しかし、
「昔からやっている=今も正しい」
とは限りません。
昔の消防では当たり前だったことでも、働き方や価値観が変われば見直す必要があります。
必要な規律は守る。
必要な訓練はする。
必要な残業なら当然対応する。
一方で、意味のない慣習は改善する。
このバランスが重要だと思います。
本当に辛いなら「消防を辞める・異動する」も選択肢
ここも以前の記事から表現を変えます。
以前は、
「その職場はブラックすぎるんで辞めましょう」
とかなり簡単に書いていました。
しかし、私はいきなり退職することをおすすめしません。
消防署や係が変わるだけで、人間関係や働き方が大きく変わることがあるからです。
私自身も勤務場所が変わったことで、以前感じていたような古い文化がなくなった経験があります。
まず、
「消防という仕事が嫌なのか」
それとも、
「今の上司・係・消防署が嫌なのか」
を分けて考えてください。
ここは非常に重要です。
後者なら、異動によって解決する可能性があります。
それでも、
「消防という働き方そのものが合わない」
「今後30年以上続けるイメージが持てない」
となったときに初めて、転職も含めて自分のキャリアを考えればいいと思います。
消防士から転職するのは逃げではない
消防士は安定しています。
給与も毎月支払われます。
社会的信用もあります。
だからこそ、
「辞めるのはもったいない」
と言われます。
それも一つの正しい意見です。
しかし、人生は消防士になるためだけにあるわけではありません。
もし本当に働き方や将来に悩んでいるなら、
「消防を続けた場合」と「民間へ転職した場合」の両方を調べてから判断する
のがおすすめです。
転職サイトを見ることと、実際に退職届を出すことはまったく別です。
情報を集めた結果、
「やっぱり消防は恵まれている」
と思えるなら、それも大きな収穫です。
消防士を辞めたい理由5選|元東京消防庁消防士が退職後のリアルを解説【2026年】
今すぐ辞める必要はありません。
まずは「自分が民間企業ならどんな仕事・年収になるのか」を知ってから判断してください。
消防士からのおすすめ転職先7選|元東京消防庁消防士が解説【2026年版】
よくある質問
消防士に残業はありますか?
あります。
災害対応、事務処理、訓練その他の業務によって正規の勤務時間を超えるケースがあります。
東京都では、正規の勤務時間外の勤務について「超過勤務」の制度が設けられています。
消防士に残業代は支給されますか?
東京消防庁を含む東京都職員には、条件を満たす超過勤務について超過勤務手当の仕組みがあります。
消防本部ごとの具体的な制度は、それぞれの自治体の条例・規則を確認してください。
当番明けの自主訓練には残業代が出ますか?
一概には言えません。
純粋に本人が自由意思で行っている訓練なのか、上司から実質的に参加を求められているのかなど、具体的な状況によって扱いが変わります。
気になる場合は「自主訓練だから」と自己判断せず、勤務上の取扱いを所属に確認してください。
上司が帰るまで待たなければいけませんか?
業務上の必要がなく、単に「上司が残っているから」という理由だけなら、私は健全な職場文化だとは思いません。
ただし、自分の仕事や引継ぎが終わっていることを確認し、周囲に一言声をかけて帰るのが無難でしょう。
まとめ|消防士だからサービス残業が当たり前ではない
消防士は特殊な仕事です。
災害は勤務時間通りには起きません。
火災現場で活動している途中に、
「勤務時間が終わったので帰ります」
とはできません。
だからこそ、時間外勤務が発生すること自体は珍しいことではありません。
しかし、
「消防だからサービス残業は当たり前」
という話とは別です。
東京消防庁を含む東京都職員には、正規の勤務時間を超えた勤務について超過勤務の手続や超過勤務手当の制度が存在しています。
「当番明けに毎回2時間残る」
「上司が帰るまで帰れない」
「若手だから無給で訓練するのが当然」
そんな環境に違和感を持ったなら、その感覚を無理に消す必要はありません。
まず、
これは本当に必要な仕事なのか。
勤務時間として処理されているのか。
単なる昔からの慣習なのか。
そこを冷静に整理してみてください。
消防は素晴らしい仕事です。
だからこそ、
消防士自身が健全に長く働ける環境であることも大切
だと私は思います。
消防士になるには?採用試験から消防学校まで元消防士が解説【2026年】
